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2023年02月02日【 寄生吸血シラミバエ 】

先月末、島内のある倉庫の中に迷い込んで、ガラスに当たって亡くなってしまった「ハイタカ」の回収に行ってきました。(回収したハイタカは標本として山階鳥類研究所へ送ります)


ハイタカ





そのハイタカの羽の中から「ハエ (双翅目)」が飛び立ったので、気になって採集し調べてみました。



アオバトシラミバエ表




アオバトシラミバエ腹



体は扁平で複眼は大きく、触角はほぼ見えません。
胸背は褐色で、脚は腿節が鮮やかなグリーン、腿節はグリーンが薄く、跗節は鮮やかなグリーンで、爪がとても発達していました。



アオバトシラミバエ爪



このハエは「シラミバエ科」の仲間で、鳥や一部の哺乳類に寄生して吸血するようです。
扁平な体で羽の中に潜り込み、発達した爪で振り落とされないように掴まっているのでしょうか?ハエを採集したケースには、吐き出した?ハイタカの血も残っていました。



さらに詳しく調べていくと「アオバトシラミバエ」という種に辿り着きました。
アオバトシラミバエは 11 科 29 種の鳥類への寄生が報告され、その中に「ハイタカ」も含まれています。
発表されてたいくつかの資料に掲載されている画像の翅脈と照らし合わせると位置も同じようです。
種によって翅脈の形が違うのであれば、「アオバトシラミバエ」の可能性が高いですね。
「アオバトシラミバエ」は八丈島で2007年5月に三根地区で採集されたという記録もありました。



「アオバトシラミバエ」は、茂木(2014)により、「マツムラトリシラミバエ」に改称されたようです。



気になって調べてみると、いろいろなことが分かって面白いです!




2個体採集し、エタノール標本にしてありますので、研究者の方で必要があればご連絡下さい。

無事に研究者のところへ送ることができ、マツムラトリシラミバエの雌成虫と同定されました。






参考資料
木村 悟朗, 尾崎 煙雄(2023)千葉県立中央博物館生態園で人囮法により捕獲されたマツムラトリシラミバエの追加記録,ペストロジー 38(2):65-66(2023).

木村悟朗・尾崎煙雄(2022)千葉県立中央博物館生態園で人囮法 により捕獲されたアオバトシラミバエ.千葉県立中央博物館研 究報告,16: 57-59.

加納六郎,2000,自然教育園におけるシラミバエについて,自然教育園報告,(31):9-11,

Mogi, M, Mano, T & Sawada, I (2002) Records of Hippoboscidae, Nycteribiidae and Streblidae (Diptera) from Japan. Medical Entomology and Zoology 53 (Suppl.2):141-165.

山内健生・島田 拓・中村 昇・鶴見みや古(2013)家屋内におけるアオバトシラミバエの採集例.都市有害生物管理 3(2): 61-63.

田村英之・加賀芳恵(2018)父島初記録となるアオバトシラミバエの採集記録.小笠原研究年報 (41): 151 - 153.

茂木幹義(2014)シラミバエ科.「日本昆虫目録第 8 巻第 2 部」(日本昆虫目録編集委員会編),743-747.櫂歌書房,福岡.

作成日:23.02.02
投稿者:takasu


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